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シーナ・コロナ・3人の兄 [books]

目黒考二は鬼籍に入ったが、椎名誠は生還した。『失踪願望。』(集英社 2023)は出版元のウェブサイトに連載している 「日記」(2021・7・7~2022・10・12)に、書き下ろし2篇を加えたエッセイ集。多くの読者の関心は2021年6月、自宅で意識を失って緊急搬送された「新型コロナ感染記」にあると思われるが、この本の肝は「三人の兄たち」にあると思う。著者の六歳上の兄、会社の先輩・山森さんの兄(歯科医)、カヌーイスト・作家の野田知佑の兄も登場するけれど、「三人の兄」 とは実兄、山森さん、野田知佑を指しているのだろう。高校生の時に失恋して自殺未遂をした兄。高田馬場駅前のタクシー乗り場で起きたヤクザとの乱闘。四国で開催されたシンポジウム会場から前後不覚の野田知佑を抱えて逃亡するエピソードは鬼気迫るものがある。このエッセイは亡くなった 「三人の兄」 への鎮魂歌である。「新型コロナ感染記」では著者の妻・渡辺一枝の存在もクローズアップされている。池袋・芳林堂で薄くてペラペラの「本の雑誌」バックナンバーに魅入った日々を懐かしく思い出す。

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失踪願望。 コロナふらふら格闘編 title=

失踪願望。コロナふらふら格闘編

  • 著者:椎名 誠
  • 出版社/出版社:集英社
  • 発売日: 2023/01/31
  • メディア:単行本
  • 目次:カニカマ、骨折、コルセット / 海苔弁、コロナ、Xデー / 禁酒、漂流、金メダル / 相棒、オアシス、後遺症 / 返納、お帰り、おとなり座 / 衆愚、減薬、初投票 / 講演、ブンガク、紅葉狩り / 族長、満月、ガイコツテレビ / 夫婦、胃カメラ、あすなろ忌 / 冬ウツ、貧困、ウクライナ / SF、寅さん、失踪名人 / 通院、タケノコ、春の海 / 東北、賢治、...

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